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zoom RSS オペラ小論ー『トリスタンとイゾルデー三島由紀夫の最期との関連性を思考する』

<<   作成日時 : 2009/01/31 23:12   >>

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画像新聞の切抜を整理していたら、三島由紀夫の憂国忌について書かれていた記事を見つけた。西尾幹二氏が講演する演壇の後ろには、あの鋭い眼光でこちらを睨みつける三島の写真が。会場に用意された450の椅子は、すぐに満席となったそうだ。そこの流れていたのは、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。生前の三島が、愛してやまない作品だったという。一体何が、彼の心を捉えてやまなかったのだろう。


この作品が発表されたのは、1859年。ベートーベンの第九と並ぶ、19世紀を代表する作品である。“超人”で知られるフリードリッヒ・ニーチェは、1888年の論文で「この作品は全くもってノン・プルス・ウルトラ(最高傑作)である」と激賞している。三島といいニーチェといい、狂気の一生を送った人物の心を、何故にこれほどこの作品はとらえ続けるのであろうか。


どんなに時代が変わろうと、我々人間社会で最も重く、尊いテーマは「恋愛」である。巷で流行るポピュラー音楽でも、恋愛をテーマにして「いない」ものを探すのは至難の技だ。ワーグナーが提示したムジーク・ドラマ(楽劇)たる本作も、全三幕に通底しているのは“道ならぬ純愛”である。トリスタンは、自らの職責を果たすために手を掛けた男の婚約者・イゾルデと「まさかの愛の海に」溺れるが、毒とわかっていて死を覚悟しつつ飲んだ液体が「媚薬」であったのは何のいたずらであろう。決して許されぬ、不倫の愛。しかし話は、「死」に向かって刻一刻と進んでゆく。


画像第二幕は、ドラマトゥルギー(劇作法)上でも非常に興味深いシーンが多い。「秩序」が全てを覆う“不毛の昼”への絶望と、夜=死への誘惑。侍女・ブランゲーネの警告も聞き入れず、愛の二重唱に酔うトリスタンとイゾルデ。その歌詞には、その端々に哲学者・ショーペンハウアーの著書「意志と表象としての世界」(1819)からの影響が見てとれる。彼によれば、人間は昼の光の中で相手を対象として捉えるが、このようにして把握された「表象としての世界」は、インドのバラモン教や仏教のマーヤーの世界。トリスタンとイゾルデが嵌った愛の慟哭と決着をつけるには、「表象作用の停止」、すなわち夜が、さらには「生きんとする意志」の停止、すなわち死もしきは仏教的な「涅槃」が必要であるーという見解だ。私は、トリスタンとマルケ王の廷臣・メロートがホモセクシャル関係にあった部分に注目したい。最初に挙げた三島もホモセクシャルで、「楯の会」のメンバーで共に市ケ谷の自衛隊駐屯地で自決した森田必勝(早稲田大学教育学部出身)と同性愛関係にあった。割腹後に解剖された三島の腸からは、森田の精液が検出されたという。突入の前に、最愛の存在と「この世での最後の契り」を結んだのだろう。


メロートの抜いた刃に自ら飛び込んでいった、あの時のトリスタンの「真実」はいかばかりであったか。この世で「存在することが許されない」愛の相手への、“不器用極まりない”愛情表現であったのだろうか。傷口の包帯を引き裂きながらイゾルデを迎えに歩み寄ったトリスタンは、臨終を前にこう歌う。



「しがらみのない、夜の国へ行こう」ー



それは天使の赦しの言霊か、それとも悪魔の囁きか。イゾルデは“愛の死”を歌いながら、宇宙との合一の旅に出る。その旅路は、果たしてトリスタンとの再会から始まるのだろうか。



人間が人間を愛することは、いつの世も美しく、そして残酷だ。(了)



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