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zoom RSS 書評―『高学歴ワーキングプア〜「フリーター生産工場」としての大学院』

<<   作成日時 : 2007/12/12 17:08   >>

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画像今年の6月、西武新宿線の爆弾テロを計画した男が逮捕された事件を憶えているだろうか。犯人は38歳の無職。有名国立大学の院を修了後希望の研究職に就けず、「自分を受け入れない世間に復讐したかった」と公判で述べたそうだ。「末は博士か大臣か」とはよく言ったものだが、いま“学者になれない博士”が急増しているという。一体、どうしてこんな状況が生まれたのか。その深層に迫ったのが本書である。


18歳人口の減少で四年制大学は存続の危機に瀕しているが、大学院生の総数は約26万人と過去最大の数字だという。なぜ、このような“天地をひっくり返す”事態ができたのか。お勉強熱心な大人が増えたから?いや、そうではない。その理由は大学が潰れることで食い扶持を失う“専任教員”たちと、各種補助金や天下り先を削られる“文科省”がタッグを組んだ、「既得権維持のための大学院重点化計画」の産物であったのだ。


平成16年の日本における自殺者の割合は0.024%。同年の大学院博士課程修了者の「死亡・不詳の者」の割合は11.45%。「博士」の10人に1人は、人前から姿を消しているー本書の第1章に記された数字は、なんとも衝撃的だ。現在、博士修了者の就職率は、およそ50%程度。二人に一人は定職に就けず、フリーター生活を余儀なくされているのだ。その数、全国で1万2千人以上。文科省や生き残りを賭ける大学の陰謀で“大量増産”された博士たちは、いつ席が空くかわからない「専任講師」の座を夢見て、非常勤講師やコンビニ、肉体労働のバイトで今日も命をつないでいる。そして、その努力が報われる日が来る可能性は、恐ろしく低い。


本書の後半では、博士号を取得しながらも遂に「専任講師」へ辿り着けなかった人々の追跡レポートが記されている。食うために教え始めた塾で活路を見いだす者は、まだいい方。朝10時から夜11時までの13時間労働に勤しむ、パチプロになった39歳男性へのインタビューには、この世の無常を感じる。


“努力が報われる健全な社会”というのが、かつての日本にはあった。現代の我が国は、一体どうだろうか。高卒で目的もなくプラプラしている輩が“フリーター”なのはわかる。しかし、他人の何倍も努力して勉学に励んだ“博士様”の終着駅が、結局“ワーキングプア”だったというのは、喜劇にもならない。博士を一人育てるのには、実に一億円もの血税が投入されているのだ。これは、決して他人事ではない。この国の将来を案じながら、私は今日も大学で、“専任”を夢見る“非常勤”博士たちの講義に、静かに耳を傾けるのである。(了)

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