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zoom RSS ミュージカル小論ージーン・ケリー『雨に唄えば』が日本のエンターテイメントに与えた影響について

<<   作成日時 : 2009/08/05 17:15   >>

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画像『雨に唄えば』("Singin' in the Rain")を取り上げたい。ジーン・ケリー(Gene Kelly)演じるドン・ロックウッドが土砂降りの雨の中を愉快にタップダンスを踊り唄うシーンは、たとえどんな沈鬱な状況にあっても、胸のうちに一条の希望の光を射してくれる不朽の一作である。今後も、多くの人の心の中に残っていくであろう作品だ。


サイレントからトーキー映画に移行する時代のドタバタを描いたストーリーだが、最初から最後まで微笑ましく進行し、観る側の心を「ほっこりさせる」展開となっている。ジーン・ヘイゲン演じる大女優リナ・ラモントを徹底的に悪役に仕立て、デビー・レイノルズ演じる駆け出しの新人女優・キャシーと主人公・ドンの恋愛模様を邪魔させる存在としているのは、あたかも日本の少女漫画雑誌『週刊マーガレット』に連載されている、女子中高生が喜びそうな作品にありがちな展開と言えなくもない。



キャシーをアパートに送り届けたドンが、強い雨の中の舗道で歌い出すシーン。



雨に唄えば、弾む心よ、よみがえる幸せ、黒い雲に笑いかければ心は太陽、愛が芽生える・・・



恋が成就し、心からの喜びを体で表さずにはいられないドンの躍動感。このシーンの撮影時、ジーン・ケリーはなんと39度台の熱と闘っていたという。しかし観る者にとっては、演者がそのような健康状態だとはとても思えない。撮影から57年を経た現在もなお、現代に生きる我々の心を捉え続けるのだから、俳優ジーン・ケリーの一世一代の“入神の演技”と呼んで差し支えないだろう。



画像ドンの服装と動きを眺めながら、ひとつ気づいたことがある。私は戦後のテレビを中心としたエンターテイメントについて個人的に研究しているが、この作品のドンが、『ハナ肇とクレージーキャッツ』の大看板として一世を風靡した、植木等の動きに似ているという点だ。昭和30年代に、植木が出演した洋傘の卸販売会社『アイデアル』のCMがあった。「なんである、アイデアル」というコピーが当時流行したらしいが、芸風といい姿かたちといい、ジーン・ケリーと植木の共通点を探すことは難しくない。当時は皇太子殿下ご成婚と東京オリンピックを経て、大衆娯楽の中心がテレビへと移行する過渡期であった。植木が鬼籍に入り、アイデアルも倒産した今となっては感慨深いものがある。“過渡期”は常に混乱と不安を多くの人間に与えるが、ジーン・ケリーや植木といった当代一のエンターテイナーの陽気なパフォーマンスが、大衆に不安に代わる“希望”を与えていたと考えたら言いすぎだろうか。


この作品が、後世の日本に与えた影響についてもう少し語りたい。同時期に制作された『巴里のアメリカ人』では赤のジャケットとカンカン帽にステッキ姿で圧巻のパフォーマンスを見せたジーン・ケリーだが、ここにもやはりクレイジー・キャッツが中心となって人気を博した『シャボン玉ホリデー』に多大な影響を与えたと思われるシーンが随所に見える。レスリー・キャロン演じるリズは、さしずめザ・ピーナッツといったところか。当時この番組の構成作家であった早稲田の先輩・青島幸男は時代の風を的確に読み取るセンスを持ったアイデアマンであったが、自由自在に跳ね回るジーン・ケリーの姿を、植木等の持つキャラクターに投影したのだろう。



いま、時代は“テレビ”からネットへの過渡期”に入っている。世界はますます混迷の度を深めているが、ジーン・ケリーや植木に匹敵するエンターテイナーは登場するだろうか。“記憶”にも“記録”にも残らない、ネット上での『ある世代のみ』を対象とした“消費財”しか出てこないのだろうか。いや、大衆が高度先端社会の極点で疲労の極みに到達した時、必ずや天から遣わされた逸材が登場するだろう。その日を待ちながら、偉大なエンターテイナーの残した作品をゆっくりと振り返りたい。(了)

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