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zoom RSS 歌舞伎小論ー伝統芸能の松明(たいまつ)を継ぐ者たちの魂に触れたい

<<   作成日時 : 2009/08/26 21:46   >>

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画像今年の2月、日本経済新聞の夕刊『人間発見』のコーナーに人間国宝・常磐津一巴太夫氏が登場されていた。昨年12月に歌舞伎座で大好評を博した、坂東三津五郎の『娘道成寺』での語りが絶賛された後のインタビューである。「浄瑠璃には義太夫、清元がありますが、常磐津は義太夫のように見台に傷がつくほど力を入れてはいけないし、清元のように、喉の上から引っ掛けるようにきれいな音を出すのではない。高い音も低い音も正面にストレートに出すのですから、舞台で許される動きはあごの角度だけです。高い音は上げて、低い音は下げる。登場人物の感情が入った語りですから、本当に難しい。私なんか一ヶ月ほぼ毎日ある公演でも「まあまあできたかな」と思えるのは、一日か二日。今日は体調がいいからと思ってもダメだったり、悪くても意外にすっといったりするときがある。まだまだ序の口です」


歌舞伎は浄瑠璃と違って台本がテキストではないという面もあるが、あごの角度だけで登場人物を演じるのは至難の技であろう。六年前にはヘルニア、昨年は事故で右大腿骨転子部骨折とトラブルも抱えたが、それでも「俳優さんに請われているうちが華」だと言う人間国宝。御年七十八歳、その芸への執念は、一体どこから湧き出てくるのだろう。


この講義が始まった4月頃、天明歌舞伎の趣を伝える屈指の劇舞踊『積恋雪関扉』(つもるこいゆきのせきのと)のプリントを頂いた。この作品では、下の巻で大伴黒主(おおとものくろぬし)が常磐津の付セリフで酔態を見せるシーンがあるが、初代中村仲蔵の大どかで骨格のある振りに特徴づけられるという。“仲蔵振り”と言われる癖振りが、上下で風を変えて語り込む常磐津地と相まってダイナミックな顔見世舞踊を形成したそうだ。当時の映像はもちろん残っていないので想像するほかないが、現・一巴太夫の年老いてなお燃えさかり続ける芸への執念に触れると、仲蔵のそれも、一巴太夫に比肩するものであったであろうことは、想像に難くない。


画像常磐津に触れたところで、今度は俳優について語りたい。4月にこの演習を受けるにあたって、様々な文献やメディアなどで歌舞伎についてあらかじめ基礎的な知識を頭に溜めておくべく、様々な映像や文献に触れていた。当時の歌舞伎座では、十五代片岡仁左衛門が『元禄忠臣蔵』に出演しており話題を集めていた。私が中学生の頃、彼はまだ仁左衛門襲名前で「片岡孝夫」と名乗っていた。その頃、NHKの大河ドラマ『太平記』で後醍醐天皇を演じた孝夫の姿を覚えている。重厚な演技で、見事に帝(みかど)の魂を演じきっていた。彼も一巴太夫と同じく、大病を経験している。芸人にとっては酒と女が芸の肥やしとよく言われるが、殊、伝統芸能に関しては大病を得ることが“高み”への関門であるような気がしてならない。


仁左衛門が、祖父の代から伝わる「鏡台」について語っている。


鏡台は、役者にとって戦に向かう武者の武具のようなもの。
引き出しの取っ手に家紋の「丸に二引き」がデザインされている凝ったつくりになっている。
古いものを大事にしながら自分の使い勝手に合わせてゆく。それは芝居も同じこと。
歌舞伎が今日まで残ってきたのは、
そうした時代に合った演出を工夫してきたからです




伝統芸能を仕事とすることを宿命づけられた、男の心意気に感銘した。





このレポートを書いている間、NHKの「ETV特集」で五代目中村富十郎の番組を放送していた。




タイトルは「弁慶の復活〜中村富十郎父子 勧進帳に挑む」。




史上最高齢で弁慶を演じる人間国宝・富十郎と、10歳で義経を演じる長男・鷹之資。押しも押されぬ人間国宝が、70歳を間近に天から授かった最愛の息子に稽古を厳しくつける姿が映し出されている。



日本の伝統を守らねばならないという人間国宝としての使命感と、名門・天王寺屋を継ぐ息子を一人前の役者にしたいという、父親としての責任感。その心優しき姿が、半分づつ垣間見えた。




老父の背中を前に「稽古というか、拷問というか」と弱音を吐く息子。



芸の道は、厳しい。




しかし、その魂の継承が、伝統芸能という我が国の“屋台骨”となっている。




歌舞伎座のさよなら公演は平成22年まで続くが、一度は足を運んで、役者の方々の“魂の継承の軌跡”に触れたいと願う。(了)





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